最後の自担、KinKi Kidsに改めて心臓を捧げた話
2019年12月14日。
待ちに待ったKinKi Kidsの、王者の凱旋…。東京ドーム入りした時のどうしようもない胸の高まりを落ち着ける術を知らない私を待ち受けていたのは、オケコンのサウンドを使った噴水ショーだった。
ドームの膨らみを保つために調整されている気圧が鼓膜を押した感覚に若干の不安を持ちながらも鼓動の高まりは素直で、手荷物検査を受けている時から半泣きに近い状態でボルテージは既にマックス。
私は緊張すると極端に黙り込むか多動になる方だから、連番してくれる子にはいつも感謝しかない。
最後の噴水ショーが終わり、ジッとステージを睨んでいると、バンッ!と客電が落とされた。
実際にはそんな音を立ててはいないのだろうけれど、私にはやたら大きな音が響き、そしてその音が余韻となり、開演へと手を引くものになったような気がした。
暗転して、数秒。赤と青のネオンの海。
聴きなれすぎた、そのイントロ。「愛のかたまり」
耳にした瞬間、身体の芯の部分から震え出し、ボロボロと、自分では制御できないところを刺激されて涙が溢れた。人間は感極まると震える…だなんて知った気ではいたけれど、私の人生においてあそこまで震えたのは初めての体験だったように思う。
それは理性的、という言葉から1番遠くにあるものだった。呼吸が乱れ、心臓が早鐘を打ち、そして大量のアドレナリンが放出されて…誇大無しに膝から崩れ落ちそうになった。声にならない悲鳴が嗚咽となった。震える手で必死に肩からかけたウィアキンのタオルを握りしめた。顔の中心から体温が上がり、ぶわりと耳まで血が通った感覚がリアルに感じられた。
あの高揚感といったら、中々に筆舌し難い。感情の渦にぐるぐると巻き込まれていくのが酷く心地よく、そして1曲目に持ってきたその合作があまりに憎らしく…。私を捉えて離さなかった。
2年越しにステージに肩を揃えて立つふたり。まさしくそれは、「変わっていく あなたの姿 どんな形よりも愛おしい」を視覚化したかのようだった。夏を越え、冬を越え…。思考錯誤しながら導き出した最適解。キラキラと輝くふたりはまた1つ、表現の幅を広げた。
涙に溺れていると、1曲目が終わった。
ぐずぐずとした泣き声で思わず「おかえり」と声に出していた。鼻にかかった自分の声が耳に届いて、あっ、自分今つい気持ちを声に出したな…と気づいた。心臓の上でぎゅっと丸めた手に力がこもっていて、切なくて仕方がなかった。
本能的に発声された声に応えるように、次の衝撃がやってきた。2曲目、「The Red Light」。
これまた頭が混乱を極めた。え…?レッライ?この曲…レッライ?……レッライ?!といった風に。
オケコンの記憶がまだ抜けきっていない頭に手伝って、噴水ショーはあの調子だったし、おまけに今回のグッズでもペンラ無し。これらの情報から完全に私の頭はオケコンのリベンジ戦だと勝手に思い込んでいたから、この選曲には度肝を抜いた。それまで涙のせいでぼやけていた視界が一気にクリアになり、思わず天を仰いだ。
これは反則です。
だって1年前まではギター弾きながら歌うことが難しいって言ってたじゃない…。横アリでさえ若干苦しそうな顔をしていたじゃない……!それなのに何故、何故そんなにカッコよく汗すら流さずにシレッとギターを弾きながら歌ってるの?!えっ、光一さん、踊ってる……。嗚呼これは薔薇と太陽を彷彿とさせるようなフォーメーション…。そんなまさか…、これ現実ですか??確かに私は別の世界線では既にレッライが披露されていると常々言ってきましたが、ついにこの世界線でも…?
いやいやいやいや、私は2度とこの曲は聴けないだろうと思っていたのに。パフォーマンスされる事はないだろうと覚悟して気持ちを押し殺してきたのに。そんな…いとも簡単に私の心の奥底に仕舞った感情を引っ張り出してくる…?
完敗です。勝負なんか始まる前から捨てていましたがこれはもうどうしようもない。今年のKinKi Kidsは杞憂さえも抱かせてくれないような時間をくれる。私は2曲目にして早々とそう確信した。
ドーム前の私はこんな記事すら書いていたのにここまで前を向かせてくれるとは凄まじい。
KinKi Kidsから担降り出来ませんでした - 陰鬱な独り言
やはり個々として確立されているもの同士がグループに帰ってきたときにそれぞれの経験値を還元して、そして愛を注ぎ合うその姿は美しいよな…。
元来私は自分の人生においても運命論者の自覚があるからKinKi Kidsにおいても遺憾無くそれが発揮されているけど、ふたりの関係性が素晴らしすぎる。
ドームを内側から破裂させる勢いで彼らに向かって放たれている愛も、そしてステージからひとりひとりに手渡しされているかのような丁寧に包まれた愛をいただくのも、最高すぎた。
ニコイチ、という単語が揶揄いからくるあまりよろしくない類の言葉だとは知っているけれど、そう呼ばれてもいいかな…と思えるぐらいにはKinKi Kidsのことを好きな自分がまだ、生きてた。
続いて3曲目の「lOve in the φ」
この曲には根強いファンがいる事をふたりは知っていて選曲したのかな?と勘繰ってしまう。
音ハメばっちりの光一さんのダンスに、ふたりの声に重なるコーラスの声が心地いい。オタクたちのペンラ芸も炸裂。私の周りでもこの曲の披露を熱望している人が数人いたけど、まさか本当にやってくれるとは。
以前に光一さんが言っていた「お前たちのして欲しいことはよく知ってる。でも俺は敢えてそれをしない」の言葉がリバーブを強めにかけた状態で頭の中で響き渡った。なるほど、これは確かにバレてる…。手のひらの上でコロコロ転がされてる。それでもいい……。えっ、もしや剛くんも私たちのこと分かってる……??愚問でした。当たり前だよね。
4曲目、「雪白の月」はこの冬特に改めて聴く機会が個人的に増えていたから沸いた。
この曲、ハモリと主メロが目まぐるしく変わっていくし、王道のバラードだから歌える人は化け物だよね…と独り言を零していたのだけれど、これもまさかの選曲…。
KinKi Kidsはこの冬、諦めを選んでいた私に希望を多く持たせてくれた。もう聴けないだろうアッパーな曲。もう踊ってくれないだろうと踏んでいたところでふたり同じステップ。KinKi KidsがKinKi Kidsでいることの諦め方を知らなかったからこその今回のドームコン。彼らの意地、彼らの博打。そして彼らの努力の結晶。それらが実を結んだ瞬間を冒頭4曲でぎゅぎゅっと凝縮して魅せてくれた。たまらない。これだからKinKi Kidsは。
ところで、グッズでペンラが出なかったのに、赤と青に綺麗に波打つ客席は紛いもなく愛でしかなかったね。正直あそこまでみんながペンラを持つとは思わなかったから感動したなぁ。
私も曲の色によってペンラの色を変えていたんだけど、一体感が破茶滅茶に気持ちよかった。
みんな一応持って行こうかな?の精神だったのかな。私はそうだった。周りが振るなら振ろうかな〜、程度の気持ちだったけど、あれはペンラを持って行って正解だった。
さて、ここでMC。
小気味のいいMCはKinKi Kidsらしさがたくさん詰まっていて、そして両手では持ちきれないほどの愛が詰まっていた。
"2年ぶり"という事を随所随所で心底嬉しそうに舌に乗せてくれたふたり。きっと立ちたくてもドームに立たないもどかしさに苛まれていたのは誰よりも当人たちだったはず。だから、私たちとふたりの気持ちが重なって、気持ちが最高潮に昂ぶった状態で会えたのが嬉しかった。
リラックスをしようと意識してドキュメンタリーやら通販番組やらを観てリラックスしすぎた結果コンタクトをしてくるのを忘れてきたのには笑った。堂本剛、何回コンサートでコンタクトのつけ忘れをすれば気が済むのか……。可愛い。そしてその話を私たちに背中を向けて聞く堂本光一。
お家芸、相方正面……!!
ありがとうございます、ケツでも見ておきます。あれだけ私を泣かせておいて震わせておいてMCではニコニコさせるというのはどういった魔法を用いているのでしょうか?MC中に「情緒不安定か!」という突っ込みが飛び出たけど、私も自分のことそう思った………。
初日はここのMCが押しに押しまくってたせいでスタッフさんが慌てながらインカムで話してる様子も目撃されてたね。
KinKi Kids、ここ数年はMC時にタイマーが付けられていた筈だけど、今回はそれがなかったのかな?そしてモニターに「次の曲いきましょう」と出される…と。
うん、清々しいまでにKinKi Kids!
「まだ、まだカッコいい曲やります…!」と笑いながらMCを切った光一さん。その宣言通りに5曲ぶっ通しのメドレー形式。
曲目は「Bonnie Butterfly」「LOVESICK」「SNOW!SNOW!SNOW!」「Want You」「Give me your love」の順。
悪い遊びを教えてもらったし、サヨナラ以外のすべて怖くはないって心から思えたし、ふたりの愛を隠せやしないし、Want Youだし、もう誤魔化さないでほしかった!
息つく間もない圧倒的な"コンサート"感!怒涛のオタク殺し選曲。止まらないダンス。腰振り…。
思い残すことがまだあっただろうか?いや、無い。
MCのおふざけが身を潜めて、顔つきが変わるあの瞬間。笑いからシリアスへの落差。これもまた、KinKi Kidsの醍醐味。可愛いのかっこいいのどっちが好き?っていう無粋な質問すらしてこないでどっちも与えてくれるのがKinKi Kids。
興奮冷めやらぬ中、メインMC。
個人的にサブMCとメインMCの間隔が短く感じたのだけれど、これは剛さんの耳を配慮しての配置だったのかな?と思う。少しでもクールダウンさせるためのMC。
それでもMC中でも頭はフル回転だろうから、本当に剛さんのしていることは凄い。誰も認めてくれなくても私が褒め称えるから安心してね。
「ディレイタワーを建てたから、見にくい所もあると思うけど…ごめんね」と口にした剛さん。その、ごめんねと言う声音が優しくて、本心からの気遣いを感じられて堪らなかった。どこまで優しいんだろう、この人は。
と、思っていたら「一律同じ料金ですので!」と声を大にして言う光一さん。バランスが取れてて、もう〜〜…!そういうのに弱いからやめてほしい。カバーしあって生きてきたんだよね、お互いに…と頭を抱え出しそうになる衝動をぐっと抑えて、双眼鏡を覗いた。
ケツしか見えなかった(2度目)。
「さて、次からは全力で大人がふざけますよ!」と言い出したふたり。疑問符がたくさん浮かんでいたこの時の私は、まだこの後にとんでもないものが待ち受けているとは…知らなかった……。
KinKi Kidsらしい、社長への追悼。軽快なノリで思い出を語り合うふたりは、どこまでもふたりぼっちだった。こういう形を取れるのはどこを探してもKinKi Kidsだけだよ。
下手すればディスりに聞こえちゃう言葉たちには、けれど確かな愛が端々に散りばめられていて胸が熱くなった。
「ちょっと何これ〜!入れないじゃない!ばい〜〜ん!!」のくだりとかめっちゃ笑った。ドームの天井に負けるジャニーさん。そして天国へ跳ね返されるジャニーさん。
小芝居を挟みつつ、でも急に「まだどこかにいるんじゃないかと思ってる節がある」なんて言い出すものだから…。そりゃそうだよね、親よりも長い間一緒に生きてきた人だし、羽根を授けてくれた大きな存在だもの。全てを受け止めるまでには時間がかかるよ。
でもこうやって思い出してくれる時間があるだけで人は嬉しいのだと思う。そしてその気持ちはちゃんと伝わってる筈。
「次の曲ではこういう振り付けをしよっか、うーん、サビはこれで、サビ以外はこれ。本気でやったら相当大変だと思う」
「「それでは地獄を見てください」」
全力でふざけます、と言い出した彼らが次に歌ったのは「たよりにしてまっせ」「買い物ブギ」、そして剛さんによるファンキーな新曲「KANZAI BOYA」にBアルバムからの「ボーダーライン」。
なるほど、合点がいった。そして脈々と流れているジャニーズイズムを感じた。とことんかっこよくて、そして最高にアガった。
振り付けをレクチャーされた「たよりにしてまっせ」は日毎にその場の思いつきで振りが変わるのかな?東京では14日と15日で全く違う振り付けになってた。
地獄を見せてくる系アイドル、爆誕。
買い物ブギは音源化してくれてても良かったのにね〜〜。相当好きな曲だし、おっさんおっさん!の掛け声が楽しいから好き。この辺でもちらちらとMCが挟まれるんだけど、流石にここのMCはまだ京セラもあるから伏せておくね。買い物ブギの後の光一さんのMCが可愛かった…。そして鬼教官だった……。
「KANZAI BOYA」は桃をやるはずだったのに急な閃きがあったので急遽曲変をしたのだそう。これまた天才的な曲を作り上げたよ、堂本剛……。来年のシングル本気で私はこれでいいと思ってるし、光一さんも乗り気だったし、剛さんもイイって言ってるんだからコレでよくない?KinKi Kidsとオタクが頷いてるんだからお願いします。待ってるからね。
「ボーダーライン」はもうみんながトレンドで知ってる、例の「とんこつ味!」遊びの曲。サンプラーできゃっきゃと遊ぶ剛さんと、気恥ずかしそうな光一さん。尊いの権化。いつまでもそのままでいてね。
あまりに歌っていなさすぎて、譜割りがわからず2日ともごちゃっとしたのはご愛嬌。
ボーダーライン後のMCはふたりしてサンプラーをぽちぽちしながらKinKi Kidsの世界。あれ…?これ私たちまた置いてけぼりにされてない……?ありがとうございます!この空気感、大変愛おしい。
「これがあるといつまでも遊んじゃうから、早くどけて!」と言うとササッと俊敏に現れるスタッフさんに笑った。長引くとわかっていたからずっとその言葉を待って待機していたのだと思うとなんだか可愛い。よかったね、と目尻が下がる。
ケラケラ笑いながらサンプラーをいじり倒した後、急に真顔になって「次からは真剣に歌いますから」「歌い出したら真面目です」のやり取り。そう、これが見たかった!天から地へと叩き落とすKinKi Kids。このやり取りを聞いた時、本当に帰ってきたんだなぁとしみじみした。あんまり理解されないかもしれないけど、その高低差がふたりの本質な気がしていた。0か100か…みたいな。そこにオタクも強制的に引き込んでいく強引さがあるのに、何故かそれが心地いい。
真面目と言われて真っ先に出てくるのはニューシングルの「光の気配」。これまたよかったんだよな…。あれだけ笑っていたのに15日はここから泣きモードに入った。それはもう大分長い泣きモードに。
14曲目の「光の気配」、聴けば聴くほど味が出てくるスルメ曲でとっても好き。歌詞も心臓に突き刺さる鋭さを持ちながらも、タイトル通りに光の気配がする曲。生で聴くとその哀愁が今のふたりと重なって、呼吸が詰まった。
光の気配でそれだけ涙したのに、畳み掛けてくるようにそこから合作メドレーへと続いていく。
「銀色暗号」「恋涙」「Topaz love」の珠玉の名曲。彼らの手によって生み出され、そして沢山の想いが込められている曲たち。個人的に思い入れがある曲もあって、ここでも涙が枯れるのではないかと言うほど、泣いた。
剛さんの不安要因を綺麗に取り除いているような入り方をしていた曲もあった。ここのメドレーは聴く人によって随分と解釈が変わってくるのではないだろうか。ちなみに私の解釈はまだ、固まっていない。
ただ、繰り返しにはなるが、ニコイチ宣言をここでしてもいいぐらいには、ありとあらゆるものを奪われた。泣き腫らした瞳で出社することになった。
剛さんに「あなた目掛けるネオンが綺麗」を考えてみたらあの夏は液晶の向こうにいて、オケコンでは着席ペンラ無し。ようやく「誰か愛するネオンは綺麗」を見せてあげられたんだなぁ…とぼんやり。視覚から入る揺れが三半規管に影響を及ぼすのかな、とちらちら危惧していたりもしたけれど、魅せてあげられてよかった。
ここから、終わりへと向かってラストスパートがかけられていく。
18曲目の「Kissからはじまるミステリー」は合いの手が出来て嬉しかったし、19曲目の「硝子の少年」ではようやく泣きモードが明けそうに。
そして20曲目の「薔薇と太陽」。炎の特効がステージを彩り、今回のコンサートで多用されているフォーメーションの生みの親となった曲なだけに感慨深かった。この曲の持つ渋さと艶やかさは何なんだろう。ここで走馬灯のように過去の記憶がバババッと呼び起こされた。
「薄荷キャンディー」で友人が泣き崩れるのを視界の端で捉えて、人によって響く曲はやはり違うことを再度確認してから…。
ラスト、22曲目の「Harmony of December」。
この曲もジャニーさんが名付けてくれた曲です、という光一さんの前振りを聴いて、そっと身体を柔らかでいてどこか物悲しいハーモニーに預けた。
12月になれば必ずこの曲を聴く、というオタクも多いんじゃないかな。私もそのうちのひとり。絶対的な社長が天に昇ってから、初めての冬。
「君に会いたい」で視線を宙へと舞わせ、優しく差し出した手をふわりと動かす剛さん。そして、その横で普段通りに歌う光一さんの対比。強さと脆さ、儚さとしぶとさ。KinKi Kidsが、そこには居た。冬の王者、KinKi Kidsがそこにいた。
このことを正しく理解して、何回目かの「おかえり」を心の中で唱えた。
「おれたち…」と言って、隣を見る剛さんに、意図を理解したかのように手を挙げる光一さん。
「「俺たち、KinKi Kids!」」久しく聴いたその掛け声は5万5千人を熱狂させるのに十分すぎる威力を持っていた。
正直アンコールの記憶は、自分だけのものにしておきたい。
冷静になりつつある今、1つ言えるのは、先週の土日の自分が羨ましすぎるという事。KinKi Kidsが帰ってきたことを会場のどよめきと悲鳴で肌で感じて、ただひたすらに嗚咽しながら震えるしかなかった自分の記憶がすでに美化されつつあるという事。慌てて筆をとるぐらいには、リアルなまま、刻んでおきたかったという事。
愛以外のものを極力削ぎ落としたようなコンサートに参加できてよかった。「思うこと色々あれど、このステージからお伝えしたかった」と言ってもらえるような対象でいられている自分が、少しだけ誇らしい。
おかえり、KinKi Kids。